MUYU

黒田泰蔵が自らの約束の地として創り、育てた場所。黒田の芸術哲学の具現化とも言える。
そこには、彼の白磁と同様に黒田泰蔵の世界がある。

家は伊豆の海に面した、崖の上に立つ。条件が揃うと、伊豆七島をきれいに望める。
これだけ眺めのいい場所は、なかなかない。雨上がり、海に虹がかかった。 - 黒田泰蔵

初めてこの土地に足を踏み入れたとき、木が生い茂る密林の中に2本の榎を見つけた。
大昔からこの場所に佇み、天災にも耐えてきた。大木の姿を見て、ここに家を建てようと決めた。 – TK

夏で葉っぱが茂っているときだと、ここの庭は東南アジアのように見えるんですよ。僕は、森のなかみたいなところに住んでいたい。
まだまだ木が大きくなって、この庭もこれからもっと森みたいになるんじゃないかな。 – TK

アトリエ

夜中、時々ベンチで横になって休みながら仕事をする。若い頃から寝るのが嫌だった。
仕事場が好きで、ここから出たくないと思う。僕はここで普通のものを作る。 – TK

家を建てたのは、友達や娘の家を含めて、たぶん十二軒以上だと思う。自分の家は立てるたびに、「こんなところ、一生は住むもんか」と思っていた。「こんな場所で死ぬのは嫌だ」って。どこか気に入らない部分があるんだよね。でもここは、初めて「死ぬまで住んでもいい」と思った。
– TK

やりたいこと、好きなことをすべて詰め込み、初めて思い通りになったと感じる小さな家。リビング、寝室、キッチン、バスルームがコンパクトに配置されている。 – TK

水の展示室

安藤忠雄が黒田泰蔵の作品のために設計をした展示スペース。 作品は浅く張った水面に展示され、その静謐な世界を誇示する。
美しい黒田白磁を見せる場であり、鑑賞者を無の境地に誘う瞑想空間と言える。

設計を安藤さんにお願いをして、自宅の敷地のなかに小さな展示室を作った。安藤さんは魅力的で、格好いい人だなと思う。 – TK